【感想】天使と悪魔(上)(中)(下)/ダン・ブラウン

宗教と科学。それは相反する2つの概念である。 古くから人間は、人知を超える自然現象は、神が起こしたものと考えるようにしてきた。雷の神、津波の神、雨の神。自然現象を神と崇め、人間に危害を加えることがあれば、祈りを捧げることさえしてきた。それが…

【感想】大地の子(1)~(4) / 山崎豊子

戦争の犠牲になるのは、いつの時代も名もなき民衆である。戦争による犠牲は、その戦争が終わってからも長い年月にわたって爪痕を残す。その中の1つに、残留孤児の問題がある。 この物語は、第二次世界大戦の折、日本人の残留孤児として中国に残された主人公…

【感想】(新版)きけわだつみのこえ /日本戦没学生記念会 編

己の人生に死を約束された人間は、何を考えるのだろう? しかも、それが己の過ちではなく、志を果たすべくでもなく、ただただ運命として与えられたものであるならば、苦悶に満ちたものになるだろう。 この本は、戦時中に徴兵され、戦没していった学生たちの…

【感想】項羽と劉邦(上)(中)(下) /司馬遼太郎

何か大きな仕事を成し遂げようと思えば、様々なものが必要になる。 中でも大事なものは、”人望”だと言われている。”人望”を得るためにはどうすればいいのか?どういう人格を身に付ければ人望を得られるのか?その一つの答えがこの物語に描かれているのではな…

【感想】ソクラテスの弁明・クリトン /プラトン

「とにかく俺の方があの男よりは賢明である、なぜといえば、私たちは二人とも、善についても美についても何も知っていまいと思われるが、しかし、彼は何も知らないのに、何かを知っていると信じており、これに反して私は、何も知りもしないが、知っていると…

【感想】 竜馬がゆく(1)~(8) /司馬遼太郎

「筆者はこの小説を構想するにあたって、事をなす人間の条件というものを考えたかった。 それを坂本龍馬という、田舎生まれの、地位もなく、学問もなく、ただ一片の志のみをもっていた若者にもとめた。(8巻「近江路」P.366)」 坂本竜馬という人物は、多く…

【感想】三国志(1)~(5) /吉川英治

吉川英治の名著「三国志」。この物語に登場する多くの武将達の性格や行動は、僕たちに多くの学びを与えてくれる。ここでは、小説の主人公である劉備玄徳に焦点を当ててみたいと思う。 劉備玄徳は、道徳を重んじ、弱きを助ける「心優しき人」である。物語の序…

【感想】華岡青洲の妻 /有吉佐和子

人間の性質のうちで最も醜く、そして最も人間らしいものは、「嫉妬心」だと思う。 己を省みても、やむにやまれぬ嫉妬心に苛まれ、自己嫌悪に苦しむ事が多々ある。人間の本能である限り、たくましく生きるために必要なものであることは承知している。ただただ…

【感想】私の個人主義/ 夏目漱石

「自己主張」と「協調性」。相反するこれらの性質は、人間関係においてどちらも大事である。どちらに行き過ぎることなく、中庸であることが理想だと僕は思う。 「自己主張」に行き過ぎた姿。それは、狭量な世界で生きる人だ。物事の考え方への多様性を認めら…

【感想】レ・ミゼラブル(1)~(5)/ヴィクトル・ユゴー

レ・ミゼラブルは、日本語で「みじめな人々」。そのタイトル通り、主人公ジャンヴァルジャンをはじめとした、当時のフランス社会の底辺で苦しみ続けた人間達の物語が綴られている。 ミュージカルや映画としても有名な作品だが、僕は小説として読むことをお勧…

【感想】 李陵・山月記 / 中島敦

敗者になることを恐れて、競争に参加さえしない人間がいる。競争の舞台に立たないのだから自尊心が傷つけられることもなく、安楽に甘んじる事ができる。何かを為そうと思わないのであれば、それでもいい。しかし、何かを為そうと思っているにも関わらず、競…

【感想】黒い雨 / 井伏鱒二

広島原爆を題材にした小説。 主人公の壮年が原爆が投下された8月6日から終戦の8月15日までの日記を紹介する形で物語が進みます。 小説の形をとっていますが、多くの人の被爆体験記の寄せ集めのような作品です。 原爆投下直後の悲惨な状況だけでなく、戦時中…

【感想】野火 /大岡昇平

太平洋戦争末期、フィリピン戦線で部隊が壊滅してしまい路頭に迷った一等兵の話。 戦場の悲惨な情景とともに、死と隣り合わせになった人間の心理描写が鮮明に描かれています。 特に心理描写に関しては、主人公の心境やそのときの自己分析などがリアルで、実…

【感想】マリーアントワネット(上)(下) /ツヴァイク

「中庸な人物を、時あって運命が掘り起こし、有無を言わさぬその鉄拳によって、彼ら本来の凡庸さを強引に抜け出させることができるということに対して、マリーアントワネットの生涯は、おそらく史上最も顕著な実例である。」 この本のはしがきに書かれている…

人間の虚栄心とは

人間の虚栄心は、生きるためにある。道徳は、それを揶揄するが、人間の大切な防衛本能を無理に悪者扱いしてはいけない。阿Q正伝の精神的勝利法を馬鹿にする人もいるが、それが生きるための術だとしたら、馬鹿にする人たちは、人類を否定する愚か者だろうか?…

【感想】死者の奢り・飼育 /大江健三郎

大江健三郎の短編集。『死者の奢り』、『他人の足』、『飼育』、『人間の羊』、『不意の唖』、『戦いの今日』の6編が収録されている。 中でも印象深かった、『他人の足』について感想を述べる。 『他人の足』は、脊椎カリエスの未成年病棟に収容された少年た…

【感想】生きることの意味 /高史明

戦時中、在日朝鮮人として日本に生まれた作者の自叙伝。 差別と貧乏の苦しい生活の中で青春時代を過ごした作者が「生きることの意味」を模索していく話。 この本は、大人になった作者が青春時代の辛い出来事を思い出しながら、そのときの出来事が自分に与え…

【感想】 羅生門・鼻・侏儒の言葉 /芥川龍之介

羅生門・鼻・杜子春・トロッコ・侏儒の言葉の5編が収録. 芥川龍之介は,人間の心理の移り変わりを表現するのがうまい作家だと言われています. 誰もが国語の教科書で目にする「羅生門」は,職を追われた下人の心理が死人の髪の毛を抜く老婆とのやり取りの中…

【感想】タテ社会の人間関係 /中根千枝

日本独特の文化である年功序列や終身雇用。近年の日本はグローバル化に合わせて、これらの文化にメスを入れ、実力主義、成果主義への変革を試みていることは近頃のニュースを見れば誰でも知っている事だ。僕も、これは「近年」の事だと思っていた。 この本を…

【感想】君たちはどう生きるか /吉野源三郎

自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に自分ばかりを中心にして物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることが出来ないでしまう。 大きな真理はそういう人の眼には…

【感想】壁 /安部公房

シュールリアリスムの作品。読み始めたときは、物語の中の物理法則や秩序が、めちゃくちゃな世界の話というだけで、物語を読み終われば、この作品を通して筆者が伝えたいことが分かるのだと思い込んでいた。主人公が名刺から名前を盗まれ、身の回りのモノが…

【感想】後世への最大遺物・デンマルク国の話 /内村鑑三

内村鑑三の講義録。 それぞれ、「後世への最大遺物」「デンマルク国の話」というテーマで講話したときの内容が収録されています。 内村鑑三が尊重する考え方・哲学にはとても啓発を受けます。「代表的日本人」と共に、何度も読みたい本のひとつです。 【後世…

【感想】代表的日本人 /内村鑑三

この本は,明治時代初期に,内村鑑三が海外の人々に日本人のすばらしさを伝えるために書いた本です. もともと英語で出版された本ですが,時代を経て日本語訳されたものなんですって. 同じ経緯で,新渡戸稲造も海外の人に向けて「武士道」を書いていますが…

【感想】古代への情熱 /シュリーマン

「かつてメックレンブルクの一商店の小僧はいまは発掘から帰ると、アテネでもっとも立派な邸宅に住んでいた。少年時代には貧しくて身体は弱く、その限界は故郷にごく近いところにかぎられ、その心は余儀なく日々のパンに向けられていた彼が、いまは自ら手に…

【感想】吾輩は猫である /夏目漱石

教師の家で飼われている猫が、主人とそれを取り巻く人間と生活を共にし描いた、人間観察日記のような小説。 夏目漱石は、明治時代の日本文化を批評することを目的にこの小説を書いたそうです。 なるほど、人間文化を批評するにあたり人間生活を傍観する第三…

【感想】武田信玄(1~4巻) /新田次郎

「日本はいま郡雄割拠の時代ではあるがこの時世がこのまま永続するものとは思われない。誰かが日本を統一しなければ民(たみ)百姓は安心して生業につくことはできない。強い者が弱い者を征服し、その強いものをさらに強い者が征服するのだ。弱い者は亡び、…

【感想】赤と黒(上)(下) / スタンダール

野心家である事は、悪い事なのだろうか?世の中では、野心的である事は、道徳に違背しているようで、人間の悪い性質の一つであるかのように扱われる。しかし、野心的であることは、言葉を変えると「向上心」とも同義のようにも思える。平等主義の世界から頭…

【感想】阿Q正伝・狂人日記 / 魯迅

「愚弱な国民は、たとえ体格がよく、どんなに頑強であっても、せいぜいくだらぬ見せしめの材料と、その見物人になるだけだ。病気したり死んだりする人間がたとい多かろうと、そんなことは不幸とまではいえぬのだ。むしろわれわれの最初に果たすべき任務は、…

【感想】樅の木は残った(上)(中)(下) /山本周五郎

江戸時代初期に伊達藩に起こった御家騒動、通称・伊達騒動を舞台にした山本周五郎の小説。 主人公は、伊達藩の家臣のひとり、原田甲斐という人物。 原田甲斐という人物は、歴史上では極悪人とされています。しかし、山本周五郎の小説では、周囲から悪人と思…

【感想】破戒 / 島崎藤村

ただ一つの希望、ただ一つの方法、それは身の素性を隠すより外にない、「たとえいかなる目を見ようと、いかなる人に邂逅おうと決してそれは自白けるな、一旦の憤怒悲哀にこの戒めを忘れたら、その時こそ社会から捨てられたものと思え。」こう父は教えたので…

【感想】少女パレアナ / エレナ・ポーター

親切と協力の念をもって生活していればその隣人たちもいつの間にかこちらに同調してくるであろう。こちらが罵り怒り、批判するならば周囲もまた怒りには怒りを返しその上に利息を添えてくる事は請け合いである。悪を予期して悪を求めれば必ず悪を得、善を見…

【感想】Itと呼ばれた子(幼少期)(青年期)(完結編)/デイブ・ペルザー

『自分が始めた事は何だって全力を尽くしている。過ちを犯したり、大失敗したりしながらも、ちゃんと学んでいる。自分の問題を人のせいなんかにしない。(中略)とにかく、なんとしてでも、人生を無駄にしないようにするんだ。あなたが教えてくれた事があると…

【感想】楡家の人びと(第1~3部)/ 北 杜夫

諸行無常。盛者必衰。日本人ならば学校で習った記憶があるはずの言葉。物事は常に移り変わり、勢いのあるものは、時間と共に必ず没落するものだ。それが世の中の理である。この物語のテーマも盛者の没落だといえる。大病院を一代で築いた楡基一郎とその一族…

【感想】若きウェルテルの悩み / ゲーテ

「規則に従って人間は決して没趣味なものやまずいものをこしらえはしない。ちょうど法律や作法によって身を律する人間が、絶対に不愉快な仲間だったりひどい悪者だったりすることがないようにね。しかしその代わりに規則というものはどんなものだって、自然…

【感想】武士道 / 新渡戸稲造

「宗教がないとは。いったいあなたがたはどのようにして子孫に道徳教育を授けるのですか。」 新渡戸稲造とベルギーの法学者ラヴレーとが懇談をしている際、日本が無宗教主義であるにも関わらず、秩序を持った生活を送れることに疑問を持ったラヴレーの一言で…

【感想】 こころ/夏目漱石

------------------------------------------- Kの自殺について ------------------------------------------- Kは何故、自殺したのだろう? 「こころ」の中では、Kの自殺の動機は明確に述べられていない。 高校の頃、読んだときは、親友からの裏切りと失恋…

【感想】怒りの葡萄(上)(下)/スタインベック

1930年代のアメリカに起こった農業の資本化。 それは、多くの農民を失業に追い込み、地獄のような苦しみを与え、果てには餓死させた。この物語は、資本主義という大きな社会システムに翻弄され、苦しめいじめられながらも、力強く生きていくひとつの農民家族…

【感想】九十三年(上)(下) / ヴィクトル・ユゴー

「わたしの考えは、いつも前進するということです。もし神が人間の後退をお望みならば、人間の頭のうしろに目を一つだけおつけになっていたでしょう。つねに夜明けのほうを、誕生のほうをみようではありませんか。(ゴーヴァン/下・P.348) フランス革命の後…

【感想】嵐が丘(上)(下) /エミリ・ブロンデ

小説家のブロンデ三姉妹の1人、エミリ・ブロンデが生涯に残したただ一つの小説。主人公ヒースクリフの自分を蔑ろにした2つの家族への復讐の物語。 ある日、貴族階級の家に何故か拾われてきたヒースクリフは、その家の2人兄妹と一緒に育てられることになる。…

弱さゆえの卑怯さ

己の弱さから出る卑怯さやズルさがある。生理学的に見れば、卑怯さは、人間の防衛本能のひとつなのだろう。道徳的観念から見れば、卑怯さは、醜き軽蔑される行動となる。しかしながら、弱さゆえに放たれる卑怯な行動は、放った本人が、最も自分を軽蔑し苦し…

【感想】 O・ヘンリ短編集(1)(2)(3)/O・ヘンリ

O・ヘンリの短編集。3冊で46作品が収録されている。 短編小説の多くは、人生の教訓に満ちており、僕たちに、人生をより良く生きるためのヒントを与えてくれる。 中でも、僕が気に入った作品を紹介したいと思う。 【警官と讃美歌】 一巻の一番最初に登場する…

「他人の不幸は蜜の味」

『他人の不幸は蜜の味』 人間の悲しき性質の1つですが、よく考えてみると、僕はこの性質を、人とのコミュニケーションにおいて、大いに役立てようとしているのだなぁ~と思う。 具体的には、自分の失敗話や、自分を蔑むような話題を出して、相手に優越感に…

【感想】罪と罰(上)(下) / ドストエフスキー

「選ばれた非凡人は、新たな世の中の成長のためなら、社会道徳を踏み外す権利を持つ」 これは、この物語の主人公ラスコリーニコフが持つ独自の犯罪理論の一部である。 ある日、彼は、その犯罪理論に基づいて、金貸しの老婆とその妹を殺してしまう。 想定外…

【感想】インドで考えたこと /堀田 善衛

筆者がインドの旅を通して、思索した事をまとめた書。1957年に発行されたものであり、現在のインドは、筆者の旅したインドとは違うのかもしれない。しかし、この本を通して、筆者が抱いた思考を辿っていく事は、狭い日本にしか視野を向けてない多くの日本人…

【感想】クリスマス•カロル / ディケンズ

意地悪でケチな商人・スクルージは、クリスマスイブの夜、今は亡き昔の同僚マーレイの幽霊に遭遇する。マーレイがスクルージの前に現れたのは、スクルージがこのままの悪い行いを続けると死後の世界で大変な目に逢うのだと忠告するためだった。 スクルージを…

【感想】他人を見下す若者たち /速水 敏彦

「現代人は自分の体面を保つために、周囲の見知らぬ他社の能力や実力を、いとも簡単に否定する。世間の連中はつまらない奴らだ、とるに足らぬやつらだという感覚をいつのまにか自分の身にしみこませているように思われる。そのような他者軽視をすることで、…