【感想】少女パレアナ / エレナ・ポーター

親切と協力の念をもって生活していればその隣人たちもいつの間にかこちらに同調してくるであろう。こちらが罵り怒り、批判するならば周囲もまた怒りには怒りを返しその上に利息を添えてくる事は請け合いである。悪を予期して悪を求めれば必ず悪を得、善を見…

【感想】Itと呼ばれた子(幼少期)(青年期)(完結編)/デイブ・ペルザー

『自分が始めた事は何だって全力を尽くしている。過ちを犯したり、大失敗したりしながらも、ちゃんと学んでいる。自分の問題を人のせいなんかにしない。(中略)とにかく、なんとしてでも、人生を無駄にしないようにするんだ。あなたが教えてくれた事があると…

【感想】楡家の人びと(第1~3部)/ 北 杜夫

諸行無常。盛者必衰。日本人ならば学校で習った記憶があるはずの言葉。物事は常に移り変わり、勢いのあるものは、時間と共に必ず没落するものだ。それが世の中の理である。この物語のテーマも盛者の没落だといえる。大病院を一代で築いた楡基一郎とその一族…

【感想】若きウェルテルの悩み / ゲーテ

「規則に従って人間は決して没趣味なものやまずいものをこしらえはしない。ちょうど法律や作法によって身を律する人間が、絶対に不愉快な仲間だったりひどい悪者だったりすることがないようにね。しかしその代わりに規則というものはどんなものだって、自然…

【感想】武士道 / 新渡戸稲造

「宗教がないとは。いったいあなたがたはどのようにして子孫に道徳教育を授けるのですか。」 新渡戸稲造とベルギーの法学者ラヴレーとが懇談をしている際、日本が無宗教主義であるにも関わらず、秩序を持った生活を送れることに疑問を持ったラヴレーの一言で…

【感想】 こころ/夏目漱石

------------------------------------------- Kの自殺について ------------------------------------------- Kは何故、自殺したのだろう? 「こころ」の中では、Kの自殺の動機は明確に述べられていない。 高校の頃、読んだときは、親友からの裏切りと失恋…

【感想】怒りの葡萄(上)(下)/スタインベック

1930年代のアメリカに起こった農業の資本化。 それは、多くの農民を失業に追い込み、地獄のような苦しみを与え、果てには餓死させた。この物語は、資本主義という大きな社会システムに翻弄され、苦しめいじめられながらも、力強く生きていくひとつの農民家族…

【感想】九十三年(上)(下) / ヴィクトル・ユゴー

「わたしの考えは、いつも前進するということです。もし神が人間の後退をお望みならば、人間の頭のうしろに目を一つだけおつけになっていたでしょう。つねに夜明けのほうを、誕生のほうをみようではありませんか。(ゴーヴァン/下・P.348) フランス革命の後…

【感想】嵐が丘(上)(下) /エミリ・ブロンデ

小説家のブロンデ三姉妹の1人、エミリ・ブロンデが生涯に残したただ一つの小説。主人公ヒースクリフの自分を蔑ろにした2つの家族への復讐の物語。 ある日、貴族階級の家に何故か拾われてきたヒースクリフは、その家の2人兄妹と一緒に育てられることになる。…

弱さゆえの卑怯さ

己の弱さから出る卑怯さやズルさがある。生理学的に見れば、卑怯さは、人間の防衛本能のひとつなのだろう。道徳的観念から見れば、卑怯さは、醜き軽蔑される行動となる。しかしながら、弱さゆえに放たれる卑怯な行動は、放った本人が、最も自分を軽蔑し苦し…

【感想】 O・ヘンリ短編集(1)(2)(3)/O・ヘンリ

O・ヘンリの短編集。3冊で46作品が収録されている。 短編小説の多くは、人生の教訓に満ちており、僕たちに、人生をより良く生きるためのヒントを与えてくれる。 中でも、僕が気に入った作品を紹介したいと思う。 【警官と讃美歌】 一巻の一番最初に登場する…

「他人の不幸は蜜の味」

『他人の不幸は蜜の味』 人間の悲しき性質の1つですが、よく考えてみると、僕はこの性質を、人とのコミュニケーションにおいて、大いに役立てようとしているのだなぁ~と思う。 具体的には、自分の失敗話や、自分を蔑むような話題を出して、相手に優越感に…

【感想】罪と罰(上)(下) / ドストエフスキー

「選ばれた非凡人は、新たな世の中の成長のためなら、社会道徳を踏み外す権利を持つ」 これは、この物語の主人公ラスコリーニコフが持つ独自の犯罪理論の一部である。 ある日、彼は、その犯罪理論に基づいて、金貸しの老婆とその妹を殺してしまう。 想定外…

【感想】インドで考えたこと /堀田 善衛

筆者がインドの旅を通して、思索した事をまとめた書。1957年に発行されたものであり、現在のインドは、筆者の旅したインドとは違うのかもしれない。しかし、この本を通して、筆者が抱いた思考を辿っていく事は、狭い日本にしか視野を向けてない多くの日本人…

【感想】クリスマス•カロル / ディケンズ

意地悪でケチな商人・スクルージは、クリスマスイブの夜、今は亡き昔の同僚マーレイの幽霊に遭遇する。マーレイがスクルージの前に現れたのは、スクルージがこのままの悪い行いを続けると死後の世界で大変な目に逢うのだと忠告するためだった。 スクルージを…

【感想】他人を見下す若者たち /速水 敏彦

「現代人は自分の体面を保つために、周囲の見知らぬ他社の能力や実力を、いとも簡単に否定する。世間の連中はつまらない奴らだ、とるに足らぬやつらだという感覚をいつのまにか自分の身にしみこませているように思われる。そのような他者軽視をすることで、…