【感想】インドで考えたこと /堀田 善衛

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筆者がインドの旅を通して、思索した事をまとめた書。
1957年に発行されたものであり、現在のインドは、筆者の旅したインドとは違うのかもしれない。
しかし、この本を通して、筆者が抱いた思考を辿っていく事は、狭い日本にしか視野を向けてない多くの日本人にとって、とても有益なものになると思う。

この本を読んだ率直な感想は、本を通してではなく、自分の肌でインドや他のアジアの諸国を見てみたいというものだった。

学生の頃は、読書になんて到底興味もなかったが、自分の狭量な世界観から脱するには、読書の力が大いに役立ったのであろうとこの本を読んで、改めて感じた。

・日本で知ることのできないアジアの文化について

そもそも、筆者がインドに渡ったきっかけは、アジア各国代表の文学作家で行われる作家会議に出席するためだった。ここで筆者は、アジアに住みながらも、日本以外のアジア文学についてほとんど知らない事を痛感させられる。他のアジア人と話題を分かち合えるのは、西洋文学についてのみなのである。
確かに、日本の書店に並ぶ外国人作家の本のほとんどが西洋文学である。現在メディアが発達し、海外のニュースなども簡単に手に入れることができるかもしれない。しかし、その国の根本的な思想や哲学は、表層的なニュースではなく、その国で育った人間によって書かれた文学によって理解することができるのではないだろうか。そう考えてみると、日本に居ながら知りえるアジア諸国の事は実に表面的なものの様に思えてくる。


・大量生産・大量消費の日本

1957年における著者でさえ、日本の大量生産・大量消費を憂いている。
今、日本における、生産と消費のスピードは、ますます加速しているのではないだろうか。日々加速していゆく資本主義経済を止めることは、もはや不可能だろう。
自分自身、製造業に携わっているが、今の日本は、無理やり需要を作り出して、それにかこつけて生産をしているような印象を受ける。本当に意味のある生産なのか、正当な資源の使い方なのか、そんな事を考えている時間さえないぐらい経済は、加速してしまっている。

また、商品の過剰包装、数時間足らずで役目を終えるビニール袋、廃棄されてゆくコンビニ弁当。それらは日本にいればこそ当たり前の事だと知らねばならない。
自分の趣味の陶芸も、一度焼いて形にしてしまうと、もう焼却処分することさえもできなくなる。限りある地球資源を使ってモノを作っていることを意識したい。

 

 

インドで考えたこと (岩波新書)

インドで考えたこと (岩波新書)