【感想】武士道 / 新渡戸稲造
「宗教がないとは。いったいあなたがたはどのようにして子孫に道徳教育を授けるのですか。」
新渡戸稲造とベルギーの法学者ラヴレーとが懇談をしている際、日本が無宗教主義であるにも関わらず、秩序を持った生活を送れることに疑問を持ったラヴレーの一言です。
海外では、道徳心は宗教から学び取るもので、学校の授業の中に宗教教育があるのが当たり前だそうです。
言われてみれば、日本に住んでいる私たちは、道徳心を学校で学んだ記憶がないものです。日本人の道徳心は、日本人の底流に備わる「武士道」の心がもたらしたものだと新渡戸稲造は述べています。
武士道の精神、それは、慎ましさや忠義心、他者への配慮など日本人が古くから美徳として認めている精神を表しています。この本を読むと、それらの日本人の美しい精神性に気付くことができ、日本人であることへの誇りを再確認することができます。
また、新渡戸稲造は、日本人の価値観について、日本人が古来から最も愛してきた花「サクラ」に例えて、下記のように述べています。
「サクラの花の美しさには気品があること、そしてまた、優雅であることが、他のどの花よりも「私たち日本人」の美的感覚に訴えるのである。私たちはヨーロッパ人とバラの花を愛でる心情をわかちあることはできない。バラには桜花のもつ純真さが欠けている。それのみならず、バラは、その甘美さの陰にとげを隠している。バラの花はいつとはなく散り果てるよりも、枝についたまま朽ち果てることを好むかのようである、その生への執着は死を厭い、恐れているようである。しかもこの花にはあでやかな色合いや、濃厚な香りがある。これらはすべて日本の桜にない特徴である。
私たちの日本の花、すなわちサクラは、その美しい粧いの下にとげや毒を隠しもってはいない。自然のおもむくままにいつでもその生命を棄てる用意がある。その色合いはけっして華美とはいいがたく、その淡い香りには飽きることがない。」
このように、日本人は、派手なものを厭い慎ましく、裏表のない誠実さに価値をおいてきた事が伺えます。僕も、サクラのように日本人らしく生きたいものです。
武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える 知的生きかた文庫
- 作者: 新渡戸稲造,奈良本辰也
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 1993/01
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