【感想】Itと呼ばれた子(幼少期)(青年期)(完結編)/デイブ・ペルザー

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『自分が始めた事は何だって全力を尽くしている。過ちを犯したり、大失敗したりしながらも、ちゃんと学んでいる。自分の問題を人のせいなんかにしない。(中略)とにかく、なんとしてでも、人生を無駄にしないようにするんだ。あなたが教えてくれた事があるとすればそのことだな』(itと呼ばれた子 - 完結編)

母親から虐待を受け、名前ではなく「it(それ)」と呼ばれていた子供の自叙伝。

読む前は、世の明るみに出ない児童虐待の実態を世の人に知らせるために書かれた作品だと思っていました。
確かに「幼少期編」では、著者が受けた恐ろしいほど残虐な虐待の現状が記されており、読んでいて気持ち悪くなってきます。
しかし、後半の(青年期)、(完結編)では、虐待を受けた過去を持つ著者の現実との葛藤や、苦しみながらも前に進み続ける著者の力強さと成長が描かれており、ただの虐待の現状を紹介する作品ではないのだと感じました。
日本でも数年前にヒットしている作品ですが、過去の苦しみを抱えながら人間として成長していく著者の姿は、多くの人間に感動を与えたのではないかと思います。

この本を読んでとても不思議に思ったのは、残虐な虐待を受けた主人公デイビットが、それでも尚、母親の愛を求め続ける姿でした。
保護されたデイビットは、死の危険さえある母親の住む実家に何度も足を運んでしまいます。それは、母親がもしかしたら自分を認めてくれるのではないか?昔のように自分を愛してくれる母親に戻ってくれるのではないか?という可能性を信じての行為でした。

第三者から見れば、その行為は信じられない愚行に写るかもしれません。ただ、母親と子供のつながりというのは、一般の考えが通じないほどの何かで繋がっているのかもしれません。
少し前に僕のおばさんから、離婚した知り合いの親権争いについて聞いたことが思い出されます。
その知り合いの母親側は、子供に経済的な苦労はさせたくないからと親権を父親側に譲ってしまったそうです。その話をした後、おばさんは言ってました。どんなに貧乏で苦労したって、母親の愛というものは、子供にとって大切なものだと。どんな苦労があろうとも、母親が親権を得るべきだったと。
二児の母であるおばさんの言うことは、確かにそうなんだろうなと思います。

 

“It”(それ)と呼ばれた子 幼年期 (ヴィレッジブックス)

“It”(それ)と呼ばれた子 幼年期 (ヴィレッジブックス)

 

 

 

“It”(それ)と呼ばれた子―少年期ロストボーイ (ヴィレッジブックス)

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“It”(それ)と呼ばれた子―完結編さよなら“It” (ヴィレッジブックス)

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