【感想】古代への情熱 /シュリーマン

古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)

「かつてメックレンブルクの一商店の小僧はいまは発掘から帰ると、アテネでもっとも立派な邸宅に住んでいた。少年時代には貧しくて身体は弱く、その限界は故郷にごく近いところにかぎられ、その心は余儀なく日々のパンに向けられていた彼が、いまは自ら手にいれたもの、すなわち莫大な資産を手にして、思うままに働ける鋼鉄のような肉体力を楽しみながら、また彼があらゆる国々にもつ個人的な交際を楽しみながら、ホメロス時代のいにしえに彼がささげた研究に専心しながら、日々をすごした。」 【7章 晩年】

考古学者シュリーマンの自伝。

幼い頃から、プロテスタントの説教師である父親からギリシャ神話をよく聞かされていたシュリーマンは、そのギリシャ神話に登場する伝説の都市トロイヤがあると信じ、発掘を持って証明することを決意する。
その後、幼い頃の夢を決して忘れず、事業を起こし資金を貯め、遂にはトロイヤを発掘する。

この自伝を読んで、シュリーマンという人物に敬服してしまいました。
幼少の頃の夢を追い続ける執着心も異常ですが、何よりも夢を実現するための実行力と計画性が物凄い。

下積み時代には、将来の夢を実現するために、多忙な仕事の合間を縫って様々な国の言語の習得に努めます。
それも、1年に何ヶ国語もマスターしてしまうというペース。考えられません。

更に、貧乏から抜け出すためと発掘の資金を貯めるために事業を起こします。
波乱万丈な道のりにも関わらず努力に努力を重ね、最後には巨万の富を得ることになります。

また、彼の人生では大変な中でも要所要所で援助してくれる人物が現れます。
夢に向かって熱意を持って取り組んでいる人間には人が集まってくると言いますが、まさにこの事だと思います。

この本は、7章構成となっており、1章が「少年時代・商人時代」、つまりシュリーマンの下積み時代になっています。その後の章は、ほとんどが遺跡の発掘についての話で、考古学に興味がなければなかなか読むのに苦労する内容です。
1章は40ページほどの文章なので、夢を実現された偉人の執念や下積み時代を学ぶという意味では、1章だけ読むことをオススメします。

 

 

古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)

古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)