読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

【感想】タテ社会の人間関係 /中根千枝

タテ社会の人間関係 単一社会の理論 (講談社現代新書)

 

日本独特の文化である年功序列や終身雇用。
近年の日本はグローバル化に合わせて、これらの文化にメスを入れ、実力主義成果主義への変革を試みていることは近頃のニュースを見れば誰でも知っている事だ。僕も、これは「近年」の事だと思っていた。

 

この本を読むと、日本の政府や会社は僕らが思うより昔から、こういった変革を望み叫んでいる一方、根強い日本文化に阻まれ、社会構造は今も昔もほとんど変わっていない事が分かる。

今、日本の大企業で「年功序列」から「成果主義」への構造改革が続々と発表されているが、この本を読んだ後では、それらは表面的な制度を変えるだけにとどまり、実際の構造変革は失敗に終わってしまうように思えてしまう。

 

◎日本の民族性や価値観からの分析

この本が出版されたのは、1967年。驚くことにこの本に書かれている日本の様子は、半世紀近く経った現在の日本とほとんど変わっていない。それは、日本の社会構造が、日本人が昔から持っている民族性や価値観が作り上げた構造であるからだという。会社が欧米から輸入してきた「成果主義」を望んだところで、日本人に民族性に合わないのだ。この民族性、価値観から社会構造を分析するというアプローチがこの本の大きな特徴である。古い本であるにも関わらず123版を超え、今でも尚、増刷され読み継がれているのは、このことが理由だろう。

 

◎場と資格。ウチとソト。タテ社会とヨコ社会

この本では、日本文化の特徴を説明するために、「場」と「資格」、「ウチ」と「ヨソ」、「タテ社会」と「ヨコ社会」といった言葉が定義されている。これらの言葉は、僕たち日本人の特徴と日本の社会構造をよく捉えているものだと感心してしまう。


 -場と資格
「場」は、「会社名」や「所属している組織」、「資格」は、その人の「役職」や「役割」の事を表しているのだという。日本人が大事にしているのは、「場」である。日本では、「大企業」に勤めていれば、その人が会社の中でどんな役割(資格)を持っていたとしても、それだけでステータスになる。逆に、どんなに素晴らしい能力を持ったベンチャー企業の社長であっても「場」が尊ばれる日本では、あまり賞賛されない。欧米では逆に「資格」を尊重する文化なのだという。これらが日本がベンチャー企業を育てづらくしている体質なのだと思われる。

 

-「ウチ」と「ヨソ」
ウチはウチ。ヨソはヨソ。日本人なら馴染みのある言葉ではないだろうか?日本人は「ウチ」と「ヨソ」を立て分ける文化を持っており、これが日本の「終身雇用」を作り上げたというのだ。会社が「ウチ」と「ヨソ」を分けるというのは、会社が終身雇用という制度で社員を自分の会社に囲い込み、「ヨソ」の会社との接点を排他的に考えるという事である。
僕は日本の電機メーカのグループ会社で技術者を勤めているが、それを如実に感じることがある。日本には、大きな電機メーカが8つあるが、他のメーカと技術的な交流はほとんどない。欧米では会社を超えた技術的な交流(フォーラムなど)が盛んに行われており、多くの技術者がその技術の躍進のために情報を共有しているというのに、なんだか日本は海外と戦う前に仲間割れしているような印象だ。そして、それぞれのメーカが出す製品といえば、どれも似たりよったりの製品ばかりなのだ。
また、情報技術の分野では、LinuxAndroidなどで有名なオープンソースという概念がある。一つのベースとなる技術を無料で提供することで、多くの開発者がそれをカスタマイズしていき、技術を躍進させていく概念である。いうなれば、無料で提供する代わりに、人類の英知を借りて発展しようという試みなのだ。そして、そのオープンソースに関しても、日本は消極的である。「ウチ」に籠ろうとする体質が、1つの企業の中に技術を閉じ込めてしまうのだ。

 

 -「タテ社会」と「ヨコ社会」
上で述べたように、日本の構造は、タテピラミッドの構造を持った組織構造が乱立しているのだ。それぞれのピラミッドは独立した王国のよういなっており、隣のピラミッドとヨコ方向に交流することがほとんどない。そして、ヨソに排他的な分、ピラミッドの内部の繋がりは強固になる。

ピラミッドの中のタテ社会では、その場にいる年数でその人間が評価される。隣のピラミッドから転職という形でヨソ者が来たところで、能力があっても勤続年数の少ないというだけでおのずと評価は低くなっていまうのだ。つまり、転職は、「勤続年数」という日本人にとって大きなステータスを捨てることになるのだ。
日本でも積極的に転職する人が増えたというが、それは若者に限った話であり、会社に長くいる社員にとっては、「勤続年数」というステータスを捨て転職するというリスクはなかなか取れたものではない。

 

◎日本のタテ社会構造の良い部分
今まで、タテ社会のネガティブな面ばかり紹介してしまったが、タテ社会には、ネガティブな面ばかりではない。高度経済成長で日本があれだけ成長できたのは、このタテ社会が作り出す徹底的な命令系統があったからだという。現在のグローバル経済でも、日本のタテ社会の良い部分が出ればよいと思う。

 

◎まとめ
感想といいながら、ほとんど、この本の要約になってしまった。日本のいち労働者として、この本は大変に勉強になった。日本のサラリーマンは、この本に触れて、日本の社会構造とその起源を知るべきだと強く思う。日本社会の構造を知ることで、現在の日本社会への不満な気持ちや労働者としての立ち振る舞いも少し変わってくるかもしれません。

 

タテ社会の人間関係 単一社会の理論 (講談社現代新書)

タテ社会の人間関係 単一社会の理論 (講談社現代新書)