【感想】マリーアントワネット(上)(下) /ツヴァイク

マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫) マリー・アントワネット〈下〉 (岩波文庫 赤 437-2)

 

「中庸な人物を、時あって運命が掘り起こし、有無を言わさぬその鉄拳によって、彼ら本来の凡庸さを強引に抜け出させることができるということに対して、マリーアントワネットの生涯は、おそらく史上最も顕著な実例である。」

この本のはしがきに書かれている言葉です。

ツヴァイクは、マリーアントワネットを中庸だとか平凡な人間だったと称しています。
その平凡な人間がフランスの王妃として、フランス革命という時代の渦に飲み込まれたとき、どのように変化していくか、ツヴァイクはそれをこの本を通して読者に伝えてたいのだと思います。


歴史に語られるマリーアントワネットの姿は、贅沢三昧の王妃であることが多いと思います。
しかし、その贅沢三昧は、自身の苦しみ悲しみの反動であり、決して彼女にとって安穏であったわけではなかったようです。
いつしかその贅沢三昧は、民衆の怒りを買い、晩年は監獄で過ごさなければなってしまいます。
そう考えると、マリーアントワネット自身の心の安息は、ずっとなかったのかもしれません。
本を読む前は、ただフランス王妃という地位を利用して、贅沢の限りを尽くすような民衆の敵というイメージを持っていましたが、少し見方が変わりました。
歴史の事実だけを見ると、残酷な事柄も、それぞれの人物の葛藤や心境を知ることで、ずいぶんと見え方が変わるものですね。


最後に、マリーアントワネットが晩年に残して言葉を紹介します。

 

「不幸のうちに初めて人は、自分が何者であるかを本当に知るものです」


ツヴァイクは、この本の中で何回もこの言葉を出しています。
自分がの本当の姿・アイデンティティ・使命。それらは苦労とか不幸の中で思索する中で見つかるものなのかもしれませんね。

 

 

マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫)

マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫)

 

 

 

マリー・アントワネット〈下〉 (岩波文庫 赤 437-2)

マリー・アントワネット〈下〉 (岩波文庫 赤 437-2)