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【感想】華岡青洲の妻 /有吉佐和子

華岡青洲の妻 (新潮文庫)

人間の性質のうちで最も醜く、そして最も人間らしいものは、「嫉妬心」だと思う。

己を省みても、やむにやまれぬ嫉妬心に苛まれ、自己嫌悪に苦しむ事が多々ある。
人間の本能である限り、たくましく生きるために必要なものであることは承知している。ただただ、他者に嫉妬せず穏やかな人間であれば、どんなに立派な人間であれるだろうと日々思う。

華岡青洲の妻」。これは華岡青洲を愛するが故、嫁姑の間で起こる嫉妬の争いの物語。
華岡青洲は、世界で初めて麻酔薬を使った乳がんの手術に成功した人物である。彼が研究していた麻酔薬の完成には、どうしても人体実験が必要であった。その人体実験に進んで手を挙げたのは、妻と姑。死ぬ可能性さえもある実験に対して名乗りを挙げた2人。その2人の女性を突き動かしているのは、互いに負けじと青洲の愛を一身に受けたいという競争心と相手を憎む嫉妬心だった。

平常であれば、簡単に決断を下せる事柄ではない。嫉妬心や競争心とは、人を盲目にし、はたまた大胆にし、判断を鈍らせてしまう。
こうした人間の性質によって判断を誤ってしまう例も多々あるのだろう。しかしまた、この大胆さという性質が活きて良い結果をもたらすことも偶然にあるのかもしれない。

嫉妬心は、僕たち人間に何をもたらしてくれるのだろうか。難しい。

 

 

華岡青洲の妻 (新潮文庫)

華岡青洲の妻 (新潮文庫)