【感想】ソクラテスの弁明・クリトン /プラトン

 

ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)

 

「とにかく俺の方があの男よりは賢明である、なぜといえば、私たちは二人とも、善についても美についても何も知っていまいと思われるが、しかし、彼は何も知らないのに、何かを知っていると信じており、これに反して私は、何も知りもしないが、知っているとも思っていないからである。されば私は、少なくとも自ら知らぬことを知っているとは思っていないかぎりにおいて、あの男よりも智慧の上で少しばかり優っているらしく思われる。」(P.24)

本物の賢者とは、どういう人間か?
それは、智慧や知識において「謙虚」さを持ち合わせた人間だとソクラテスは言っている。

世間から知識人と称されている人の中には、知識を自らの虚栄心を満たすためのものにしてしまっている人がいる。
そういった人達は、自分の知識に溺れ、人から教わる事に謙虚になれなくなってしまう。

それに比べ、智慧と知識を探求し続けている人間はどうか?彼らは、自らの持っている知識が全てで無い事を知っているし、一生のうちに、その全てを知りうることが不可能であることも知っている。世の中の真理から見れば自分の持っている知識など、ちっぽけなものだと・・・。

だからこそ、新しい知識には、謙虚な姿勢で臨むし、人からモノを教わることに対しても謙虚である。

自らに置き換えてみると、常に謙虚な姿勢を持つことは大変に難しい事のように思える。
僕たちの生きている世界には、人を階級的に捉えるための指標が沢山あり、その指標に則って人の優劣を付けてしまうことが往々にしてある。その中にあって、その差別的意識を克服し、誰からも学ぶ姿勢を持ち得ることは、口で言うほど簡単な事ではない。

ただ、少しずつでも、謙虚な姿勢を保つ理性を身に付けたいと思う。

 

 

ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)

ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)