【感想】天使と悪魔(上)(中)(下)/ダン・ブラウン

天使と悪魔 (上) (角川文庫)天使と悪魔 (中) (角川文庫)天使と悪魔 (下) (角川文庫)

宗教と科学。それは相反する2つの概念である。

古くから人間は、人知を超える自然現象は、神が起こしたものと考えるようにしてきた。雷の神、津波の神、雨の神。自然現象を神と崇め、人間に危害を加えることがあれば、祈りを捧げることさえしてきた。それが宗教の起源である。しかし、その自然現象は、科学の手で次々に解明され、宗教の分野が侵されつつあるのは目に見えて明らかである。

科学が優勢となった現代において、宗教は必要なくなったのだろうか?その答えをこの本の教えてくれている。

 

昨今、科学は人間の生活を豊かにし、たくさんの恩恵を与えてきた。しかし、それはあくまでも物質的な豊かさであり、精神的な豊かさには、行き届いていないのが現実である。むしろ、科学は人間の精神性を置き去りにして、物質的な豊かさだけを肥大化させて、人間を危険な状態に陥らせているといっても過言ではない。例えば、原子力が、その一つである。原子力という絶大なエネルギーを戦争の道具として利用するか平和利用するかは、人間の倫理観・道徳観に依存する。倫理観や道徳観といった精神性が蔑ろにされて、技術だけが先行した事例が、核爆弾という悪魔なのではないだろうか?他にも、地球資源の急速な消費や、物質を中心とした資本主義経済なども、精神性が置き去りにされ物質主義が台頭した事例だといえる。

現代における宗教の必要性は、まさにこの科学を中心とした物質主義に対して精神性を追い付かせるための方途だと言っていい。古くから、宗教は、道徳教育の一面を持ち合わせてきた。今、この時代に、人間の精神性を教育し、物質的な豊かさと精神的な豊かさを同じ水準にすることは、宗教の役割だと言えるのではないだろうか。

 

 

天使と悪魔 (上) (角川文庫)

天使と悪魔 (上) (角川文庫)

 

  

天使と悪魔 (中) (角川文庫)

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天使と悪魔 (下) (角川文庫)

天使と悪魔 (下) (角川文庫)