【感想】嵐が丘(上)(下) /エミリ・ブロンデ

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小説家のブロンデ三姉妹の1人、エミリ・ブロンデが生涯に残したただ一つの小説。
主人公ヒースクリフの自分を蔑ろにした2つの家族への復讐の物語。

ある日、貴族階級の家に何故か拾われてきたヒースクリフは、その家の2人兄妹と一緒に育てられることになる。兄のヒンドリは、ヒースクリフの容貌と気品の悪さを嫌い、ヒースクリフを虐める。ヒースクリフと年の近い妹のキャサリンは、野性的なヒースクリフと遊ぶようになり、貴族らしい気品からは遠ざかって育っていってしまう。この2人、キャサリンとヒースクリフは共に愛するようになるのだが、2人の愛は、互いのエゴイズムの所為で最後まで報われない。ヒースクリフは、兄ヒンドリへの憎しみと、キャサリンへの愛憎。そして、キャサリンの嫁ぎ先であるリントン家に対する恨みから、復讐劇を繰り広げる。

この物語の舞台は、ヒースクリフ達が暮らした嵐が丘に建つ屋敷と、リントン家が住むスラッシクロス屋敷の2つの屋敷だけに留まっており、空間としても人間関係としても閉塞感のある印象を受ける。しかし、物語は、家族2世代にも渡って続いており、時間軸が他の小説よりも長い印象を受ける。その時間軸の中に、悪しき教育が人間を変えていく様や、堕落していく人間の末路、結ばれぬ恋への苦しみと嫉妬心、そして長い年月をかけた復讐劇が描かれる。エミリ・ブロンデは、28歳でこの物語を書いた。28歳の人間がどのような人生経験を経て、こういった作品を書き上げたのか、読みながら始終考えていた。


最後にヒースクリフとキャサリンの恋について触れてみたい。
キャサリンとヒースクリフは愛しあっていた。しかし、キャサリンは、財産の無いヒースクリフへの愛と、生活のための金銭の幸福を両立させようと、リントン家のエドガと結婚してしまう。彼女の思惑は、ヒースクリフにもエドガにも勿論理解などされない。ヒースクリフは、彼女の身勝手な行動に恨みを募らせ、彼女に対して復讐を試みる。
この2つのエゴイズムは、互いに互いを遠ざけあい、最後まで2人を不幸にしてしまう。
この本を読み、初めて「愛憎」という言葉を知った。一人の人間に対して、相反する愛と憎しみは共存することがある。人間の心理とは何故こんなにも複雑にできているのだろうか。

 

 

 

嵐が丘(上) (岩波文庫)

嵐が丘(上) (岩波文庫)

 

 

嵐が丘〈下〉 (岩波文庫)

嵐が丘〈下〉 (岩波文庫)