【感想】九十三年(上)(下) / ヴィクトル・ユゴー

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「わたしの考えは、いつも前進するということです。もし神が人間の後退をお望みならば、人間の頭のうしろに目を一つだけおつけになっていたでしょう。つねに夜明けのほうを、誕生のほうをみようではありませんか。(ゴーヴァン/下・P.348)


フランス革命の後半、ヴァンデの反乱を舞台にした物語。
フランス革命を舞台にしているだけに、この歴史的背景を知っていれば、もっと有意義に読み進められたと思う。
本を読みながら、簡単にフランス革命について調べてみたが、
貴族が私欲の限りを尽くしていた社会に不満を持った民衆が、民主主義を勝ち取るために革命を起こす姿は、数ある歴史の中でも、もっと知らなければならない事柄だと思った。

また、この本の表紙にも印刷されているドラクロワの「民衆を導く自由の女神」という有名な絵も、フランス革命の背景を知ることで、より一層、迫力が増すように思える。先頭に立つ自由の女神が持つフランスの旗は、青「自由」、白「平等」、赤「友愛」と革命軍が意義付けており、民衆が目指す理想の象徴がそこにあるのだ。(このフランスの国旗の由来は、俗説らしいが、本編の中では、革命軍の目指す理想として「自由」「平等」「友愛」であることが述べられている)

この物語で印象に残ったのは、物語最後のゴーヴァンの葛藤である。
敵であるラントナック侯爵は、自分の首と引き換えに庶民の子供を救う。


自分の理想とするヒューマニズムを実践したラントナック侯爵を殺すことは、自身が根本的に目指すヒューマニズムの理想社会への背徳に当たらないのか?しかし、その理想社会への変革を真っ向から阻止する親玉は、ラントナック侯爵なのだ。


ゴーヴァンの葛藤は、ラントナック侯爵を助けることで終結を迎えることになる。しかし、それは自分の命と引き換えに。

ユゴーは、ラントナックとシムールダンを通して、革命の時代には「冷酷さ」が大事なのだと述べている。しかし、最後にゴーヴァンが導き出した答えこそが、ユゴーがこの本で読者に伝えたかった本当のメッセージなのだと思う。

もうひとつ、深くは触れないが、シムールダンとゴーヴァンの師弟関係にもユゴーはメッセージを残しているのではないかと思う。

次は、ユゴーの長編小説、レ・ミゼラブルに挑戦したい。

 

 

九十三年〈上〉 (潮文学ライブラリー)

九十三年〈上〉 (潮文学ライブラリー)

 

 

九十三年〈下〉 (潮文学ライブラリー)

九十三年〈下〉 (潮文学ライブラリー)