【感想】吾輩は猫である /夏目漱石

吾輩は猫である (角川文庫)

 

教師の家で飼われている猫が、主人とそれを取り巻く人間と生活を共にし描いた、人間観察日記のような小説。

夏目漱石は、明治時代の日本文化を批評することを目的にこの小説を書いたそうです。
なるほど、人間文化を批評するにあたり人間生活を傍観する第三者の立場である猫を使ったことは、とても利にかなっている気がします。主人公が人間であれば、人間という生物の文化に対して、ここまでつっこんだ批評を展開することは難しいのではないでしょうか。巧みですね。

内容は、いたってコミカル。登場人物は変人ばかりです。
日本文化を批判するには、その時代の特徴を如実に表した人間、つまり変人を登場させたほうが都合がよかったのかもしれません。
ただ、落語で出てくるような人間同士の馬鹿なやり取りの中にも、人間の本質を鋭く洞察する文章が出てくるのは、夏目漱石らしいと思います。

 

吾輩は猫である (角川文庫)

吾輩は猫である (角川文庫)