【感想】生きることの意味 /高史明

 

生きることの意味―ある少年のおいたち (ちくま文庫)

戦時中、在日朝鮮人として日本に生まれた作者の自叙伝。
差別と貧乏の苦しい生活の中で青春時代を過ごした作者が「生きることの意味」を模索していく話。

この本は、大人になった作者が青春時代の辛い出来事を思い出しながら、そのときの出来事が自分に与えた影響が語られています。
その辛い出来事を思い出す度に、一貫しているのが、
「その辛さや苦しみが、人を思いやるやさしさを教えてくれた」
という話です。

朝鮮人として差別され虐められた出来事も、日本人との生活の違いに悩み、孤独を感じ、他人に暴力を振るうようになった日々も大人になった今考えると、そのときに暗中模索したことは全て人に対する優しさの源になってるんだといいます。

ただし、この考えを持つようになったのは、小学校高学年にある日本人の先生に出会ったからみたいです。
作者は、この先生を「本当のやさしさを教えてくれた人」だといってます。
それは、ただ愛情を持って接してくれるやさしさではなく、これから先にある辛いことを乗り越えられる力をつけるために指導してくれるやさしさだったそうです。
この先生は、朝鮮人の作者に対して、差別しなかったのではなく、特別扱いしなかったという風にも感じとれました。
そう考えると、悲しさや辛い思いだけが作者に「やさしさ」を与えたのではなく、本当の人のやさしさを教えてくれる人への出会いが大事だったんだと思います。

辛いこと悲しいことは、生きていれば多々ありますが、それを全て、「人を思いやるやさしさの源」と考えられるようになれれば幸せですね。でも、だいたいはしばらくたってから、よくよく考えると「あの出来事は意味があったんだな」って思うのがほとんどですが…

 

 

生きることの意味―ある少年のおいたち (ちくま文庫)

生きることの意味―ある少年のおいたち (ちくま文庫)