【感想】黒い雨 / 井伏鱒二

黒い雨 (新潮文庫)

広島原爆を題材にした小説。

主人公の壮年が原爆が投下された8月6日から終戦の8月15日までの日記を紹介する形で物語が進みます。

小説の形をとっていますが、多くの人の被爆体験記の寄せ集めのような作品です。

原爆投下直後の悲惨な状況だけでなく、戦時中の食料事情や被爆してしまった人のその後などが生々しく描かれてます。

題名の「黒い雨」とは、原爆投下後に振る大粒の雨のこと。
放射性物質が含まれているため、この雨に打たれると被爆してしまうそうです。

主人公の姪がこの黒い雨に打たれてしまったことで周囲から被爆を疑われ、縁談がことごとく断られてしまいます。
原爆の被害とは、2次にも3次にも広がっていくんですね。

原発の話ですが、結婚相手が原発の近くに住んでいるという理由で両親が結婚を許してくれない話をネットで見たことがあります。
そのお父さんは、
「ただ、五体満足で健康な孫の笑顔を見たいだけなんだ」
って言うそうなんです。もうなんとも言えない。
両親の気持ちも分かるし、結婚を許してもらえない子供達の気持ちも分かるもの。

原子力は、そのときだけでなく未来にも不幸の遺産を残すもの。
社会が、原子力に頼らないエネルギーシステムに早く切り替わって欲しいです。

 

 

黒い雨 (新潮文庫)

黒い雨 (新潮文庫)