【感想】怒りの葡萄(上)(下)/スタインベック

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1930年代のアメリカに起こった農業の資本化。
それは、多くの農民を失業に追い込み、地獄のような苦しみを与え、果てには餓死させた。この物語は、資本主義という大きな社会システムに翻弄され、苦しめいじめられながらも、力強く生きていくひとつの農民家族を描いた物語。

この本を読んで、資本主義の恐ろしい側面を知ることができた。
おそらく、この時代の資本主義経済は、労働者を擁護する環境が整えられていなかった事もあり、現在日本におけるそれとは仕組みが違うだろう。
ただ、この恐ろしい側面は、少なからず現代のそれにも内在しているのではないかと思う。
僕も社会人となり、資本主義経済の大半を占める労働者の一員となった。僕は、不自由の無い暮らしの中に無理やりに需要を作り出し、無駄になる資源を顧みず生産し続ける現代の資本主義経済には、なんだか行き詰まりを感じる。周囲を見渡してみても、労働者としての不安定さというものは、定年まで付きまとうのであろうと思う。ただ、いくら個人が思いを巡らしたところで、加速し続けてきた経済活動は今更止まることなど出来ないのだろう。
資本主義経済という大きな流れに逆らって生きることは出来ないかもしれないが、せめて自分の見える範囲の人間は救えるような力を付けたいと思う。

最後に、この本で紹介されている、1930年代アメリカの農業の資本化について、勉強になったので下記にまとめておく。

・大規模農業が台頭し、機械化・効率化により商品の大量生産が行われるようになる。商品の単価は、下げられ、小規模農業を営む農民はますます苦しくなる。
・いずれ小規模農業は、生活に貧窮し、自身の土地を担保に借金をし、更には、小作人に落ちぶれてしまう。そして、利益の上げられなくなった小作人は、最後には土地から追い出されてしまう。農民の土地を貪る大規模農業は、ますます肥大化してゆく。

・土地を追われた農民は、自身の労働力を売ることで生活を賄わなければならない。
・雇主は、わざと必要以上の人数の募集を出す。それは、生活に貧窮した農民をできるだけ安い賃金で雇うため。切実な生活のために、自分よりも安い賃金で働く人間がいる事を引き合いに出して、安い賃金での労働を強いるのだ。
・必要以上に集められた労働者は、働き口も少ないうえ、賃金さえも少ない。雇主が優位となり、労働者はどんどん苦しまなければならない。

この時代には、何万もの農民がこのような地獄の苦しみに耐えねばならなかったようです。
このような歴史は、決して繰り返しては、いけないと切実に思います。

 

 

怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)

怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)

 

 

怒りの葡萄 (下巻) (新潮文庫)

怒りの葡萄 (下巻) (新潮文庫)